【実例公開】50代でサブ3.5達成へ。AIが導き出した「週末セット練」メニューの全貌

マラソントレーニングのVDOT計算やリスク分析を行う、高度なAIプログラムの画面イメージ。
目次

はじめに

前回の記事では、「市販のトレーニング本が、なぜあなたのPB更新を阻むのか?」というお話をしました。

最大の理由は「年齢、性別、走行可能日、怪我などの個別事情」と「現在のVDOT(本当の実力)」が考慮されているからです。

「理屈はわかった。でも、実際にAIはどんなメニューを作ってくれるの?」
「どうせ、ネットに落ちている表と大差ないんじゃない?」

そう思っている方もいるかもしれません。
そこで今回は、論より証拠。

ある「50代男性ランナー」のリアルな悩みに対し、当ブログの提供するAIコーチによる練習メニューを公開します。

※使用しているシステムについて
本企画のメニュー作成には、GPT-5 Thinking クラス(ChatGPTの有料版相当)のAIモデルを使用しています。ただし、単にAIとチャットするだけでは、このような精密な計画は作れません。当ブログ独自の「特別な指示(プロンプト)」により練習メニューを作成しています。

今回のモデルケース:50歳・膝に爆弾あり

膝の痛みに悩む50代男性ランナーの様子。サブ3.5を目指す上での不安。

今回、AIに相談を持ちかけたのは、以下のような悩みを持つランナー(Aさん)です。
あなた自身の状況と重ね合わせながら見てください。

ランナーAさん

「週末にまとめて走りたいけど、膝が心配で…」

【Aさんのプロフィールと悩み】
  • 年齢/性別: 50歳 男性
  • 現在の走力: フルベスト 3時間45分(1年前)
  • 今回の目標: サブ3.5(3時間30分切り)
  • 身体の悩み: 以前より疲れが抜けにくい。右膝に少し違和感がある。
  • 生活の悩み: 平日は仕事が忙しく、距離が踏めない。
  • 要望: 「土日にまとめて走る『セット練』を取り入れたい」

いかがでしょうか?

市販のメニュー本には、「週5回練習」や「水曜日に15km走」などが普通に書かれています。しかし、Aさんのような生活スタイルのランナーはそれを実施するのはかなり厳しいというのが実情です。。
では、AIはこの難題をどう対応したのでしょうか?

AIコーチによる「現状分析」

AIコーチがランナーに対して「完全休養」をアドバイスしているチャット画面のイメージ。

メニュー(表)を作成する前に、AIはまず「現状の分析」と「リスク判定」を行います。ここでの回答が、非常に人間味があり、かつプロフェッショナルでした。
以下は、AIコーチとの対話ログの一部です。

AIコーチ

Aさん、こんにちは。50歳でのサブ3.5挑戦、素晴らしいですね!まずは現状を冷静に数字で分析しましょう。

1.VDOT分析
現在の走力(3:45:00)は VDOT 40.6 です。目標のサブ3.5には VDOT 44.2 が必要です。この「3.6」の差を埋めるのは簡単ではありませんが、適切な負荷なら達成可能です。

2.リスク管理(最重要)
「疲れが抜けにくい」「膝の不安」がある中で、ご希望の「週末セット練」を行うのは諸刃の剣です。今回は「土曜に強度を上げ、日曜は距離を踏む(ペースは落とす)」組み合わせで衝撃を分散させます。その代わり、月曜日は必ず「完全休養」にしてください。 これが守れないなら、この計画は実行しないでください。

ランナーAさん

驚きました。
「月曜を休むなら、セット練を許可する」という条件付きの提案。これは、専属コーチならではの提案です。

【完全公開】AI作成「4週間トレーニング計画」

それでは、実際に生成されたメニュー表をご覧ください。サブ3.5達成に向けた「強化フェーズ(第1クール)」の週間スケジュールです。

AIによって作成された、色分けされて見やすいマラソン週間トレーニング計画表のイメージ。

1. ペース設定

まず、AIはダニエルズ理論に基づき、Aさんの「現在の実力」に合ったペースを秒単位で指定してきました。

  • E (Easy / ジョグ): 6:15 〜 6:50 /km
  • M (Marathon / レースペース): 5:23 /km
  • T (Threshold / 閾値): 5:02 /km
  • I (Interval / スピード): 4:40 /km

注目してください。

サブ3.5のレースペースは「4:58/km」ですが、普段のジョグ(Eペース)は「6分半〜7分近く」でいいと指示しています。多くの人が「練習はなるべく多くキロ5分半で走らなきゃ」と思いがちですが、AIは「遅く走る勇気」を数値で示してくれました。

2. AI作成「4週間トレーニング計画」:サブ3.5用

テーマ: 脚作りと、週末セット練への適応
設定VDOT: 40.6 → 41.0

スクロールできます
曜日メニュー内容想定距離設定ペース狙い・ポイント
1完全休養0 kmスタート週。無理せずリズムを作ります。
Eラン 40分 + WS 3本7 km6:30-45リラックスしてフォーム確認。
[P] 閾値走 15分 (Up/Down込)7 kmT: 5:02まずは15分から。心肺に刺激を入れます。
完全休養 OR Eラン30分0-5 km6:45疲れがあれば迷わず休みましょう。
Eラン 30分5 km6:30土曜に向けて脚を温存。
[セット1] Mペース走 8km12 kmM: 5:23余裕を持って終われる距離です。
[セット2] LSD 90分13-15 km7:00ゆっくり長く。ペースは上げないこと。
2完全休養0 kmセット練の疲労抜き。入浴やストレッチを。
Eラン 45分 + WS 5本8 km6:30WSで少し動きを大きくします。
[P] 閾値走 20分 (Up/Down込)8 kmT: 5:02先週より5分延長。ここが頑張りどころ。
Eラン 30分5 km6:45つなぎのジョグ。
Eラン 30分5 km6:30週末への準備。
[セット1] Mペース走 10km14 kmM: 5:23距離を伸ばします。給水練習も兼ねて。
[セット2] LSD 100分14-16 km7:00音楽でも聴きながらリラックスして。
3完全休養0 km今月最大の山場を越えるための休養です。
Eラン 50分 + WS 5本9 km6:30基礎スタミナ維持。
[P] 閾値走 20分8 kmT: 5:02ペース維持に集中。
Eラン 40分6 km6:45少し距離を伸ばします。
Eラン 30分5 km6:30軽めに。
[セット1] Mペース走 12km16 kmM: 5:23今月のハイライト練。後半粘りましょう。
[セット2] LSD 120分17-19 km7:00セット練の総仕上げ。終われば来週は楽です。
4完全休養0 km**【回復週】**今週は距離と強度を落とします。
Eラン 30分5 km6:45疲労を抜くためのジョグ。
[P] Eラン 45分 + WS7 km6:30今週はポイント練習も休み(Eランに変更)。
完全休養0 km週末に備えてしっかり回復。
Eラン 30分5 km6:30軽めに。
[セット1] Eペース走 60分9 km6:30MペースではなくEペースでOK。
[セット2] Eラン 90分13 km6:45気持ちよく終わって来月へ繋げます。

上記は「基礎構築期(最初の1ヶ月)」のメニューです。AIはこの後、「強化期」「調整期(テーパリング)」を含めたレース本番までの全日程を出力してくれますが、長くなりすぎるためここでは割愛します。
「長すぎるので省略しようと思いましたが、AIの本気度をお伝えするために、あえて全12週間のスケジュールを掲載します」

クリックして第2フェーズのメニューを見る

🏃‍♂️第2フェーズ:強化期(第5週〜第8週)

テーマ: スピード持久力の強化と、距離への慣れ

設定VDOT: 41.0 → 41.5(少し強度を上げます)

スクロールできます
曜日メニュー内容想定距離設定ペース狙い・ポイント
5完全休養0 km回復週明け。ここからギアを上げます。
Eラン 50分 + WS 5本9 km6:30フォームを大きく。
[P] 閾値走 20分9 kmT: 5:00ペースを少し上げます(5:02→5:00)。
Eラン 30分 or 完全休養5 km6:45無理しない。
Eラン 40分6 km6:30週末への準備。
[セット1] Mペース走 14km18 kmM: 5:21距離・ペース共に負荷増。正念場です。
[セット2] LSD 120分16-18 km7:00セット練。とにかく時間を稼ぐ。
6完全休養0 kmしっかり休んでください。
Eラン 60分10 km6:30ジョグの時間を少し伸ばします。
[P] 閾値走 10分×2本 (休2分)10 kmT: 5:00分割してトータル時間を伸ばす練習。
Eラン 30分5 km6:45つなぎ。
Eラン 30分5 km6:30軽めに。
[セット1] 30km走 (Eペース)30 km6:30-45**【重要】**本番前の最長距離走。ペースは遅くてOK。
完全休養 or ウォーク0 km30km走の翌日はセット練回避。回復優先。
7完全休養0 kmダメージを抜きます。
Eラン 45分 + WS8 km6:30体調確認。
[P] 閾値走 20分9 kmT: 5:00リズムを取り戻す。
Eラン 40分6 km6:45距離調整。
Eラン 30分5 km6:30軽めに。
[セット1] ビルドアップ 15km19 kmE→Mラスト5kmだけMペース(5:21)まで上げる。
[セット2] Eラン 90分13 km6:45セット練再開。疲労状態で走る練習。
8完全休養0 km【回復週】 いったん負荷を落とします。
Eラン 40分6 km6:45ゆっくり。
[P] Mペース走 8km12 kmM: 5:21ポイント練習も距離を短く。
完全休養0 km中休み。
Eラン 30分5 km6:30軽めに。
[セット1] Eペース走 10km10 km6:30週末も控えめに。
[セット2] Eラン 60分9 km6:45来週からの仕上げに備えて体力温存。
クリックして第3フェーズのメニューを見る

🏁 第3フェーズ:調整期・テーパリング(第9週〜レース本番)

テーマ: 疲労を抜きつつ、レース勘を研ぎ澄ます

設定VDOT: 41.5(維持)

スクロールできます
曜日メニュー内容想定距離設定ペース狙い・ポイント
9完全休養0 km最後の追い込み期間スタート。
Eラン 50分 + WS 5本9 km6:30キレを出す。
[P] インターバル 1km×3本9 kmI: 4:38**【刺激入れ】**心肺に強い負荷。本数は少なめに。
Eラン 30分5 km6:45つなぎ。
Eラン 30分5 km6:30軽めに。
[セット1] Mペース走 10km14 kmM: 5:21レースペースの最終確認①
[セット2] LSD 90分13 km7:00最後のロングジョグ。
10完全休養0 kmここから徐々に練習量を減らします(テーパリング)。
Eラン 40分6 km6:30気持ちよく。
[P] 閾値走 15分7 kmT: 5:00時間を短縮。質は落とさない。
完全休養0 km休みを増やす。
Eラン 30分5 km6:30軽めに。
[セット1] Mペース走 8km12 kmM: 5:21レースペース最終確認② 感覚重視。
Eラン 60分9 km6:45もう長く走る必要はありません。
11完全休養0 km疲労抜き優先。
Eラン 30分 + WS 3本6 km6:30刺激入れ。
[P] Mペース走 5km9 kmM: 5:21最終ポイント練習。腹八分目で終わる。
完全休養0 km睡眠時間を増やす。
Eラン 30分5 km6:30リラックス。
Eラン 40分6 km6:30軽く汗を流す程度。
完全休養0 kmカーボローディング。装備チェック。
12完全休養0 km【レース週】 仕事も無理しない。
Eラン 30分 + WS 2本5 km6:30軽く体を動かす。
Eラン 30分 (またはMペース2km)5 km5:21最後の刺激(調子を見て)。
完全休養0 km体力を満タンにする。
Eラン 20分 or 完全休養3 km6:45散歩程度でもOK。
前日刺激ジョグ 15分2 kmEasy軽く脚を回すだけ。
🏆 レース本番42.195M: 5:21目標:3時間29分!楽しんで!

AIコーチのここが凄い!「3つの解説」

この表を見て、「なんだ、普通じゃないか」と思われたかもしれませんが、ここには「怪我なくPB更新する」ための高度な計算が3つ隠されています。

① 「強度」と「距離」の分散(土日のパズル)

Aさんは「週末にまとめて走りたい」と言いました。
普通のメニューなら「土曜15km、日曜20km」などとして膝を壊します。
しかしAIは、

  • 土曜: 距離は短いが、ペースは速め(Mペース)=心肺とスピードへの刺激
  • 日曜: 距離は長いが、ペースは極端に遅い(LSD)=脚筋力とスタミナへの刺激

このように「負荷の種類」を変えることで、膝への一点集中ダメージを防ぎつつ、セット練の効果を最大化しています。

② 「木曜」のバッファ(逃げ道)

木曜日のメニューに注目してください。
「Eラン 30分 or 完全休養」となっています。

50代のランナーにとって、水曜日のポイント練習(閾値走)のダメージは翌日に響きます。ここで「絶対に走れ」と言わず、「疲れていたら休んでいいよ」という逃げ道をあらかじめ作ってくれています。
この「余白」こそが、継続の秘訣です。

③ Eペースの徹底した「遅さ」

しつこいようですが、Eペース(ジョグ)の上限が「6:50/km」です。
サブ3.5を目指すランナーにとって、キロ7分近くで走るのは「遅すぎて不安」かもしれません。
しかし、AIは「あなたの年齢と回復力を考えると、これ以上速く走るとポイント練習の質が落ちる(=ゴミマイルになる)」と判断しているのです。

Q&A

Q1. 私は50代ではありませんが、同じようなメニューは作れますか?

A. はい、もちろんです。今回は「50代・膝不安あり」という条件で出力しましたが、AIは「20代で回復力が高いランナー」や「60代で初フル完走を目指す方」など、あらゆる年齢と走力に合わせて計算式を調整します。あなたの属性に最適な負荷をご提案します。

Q2. Eペース(ジョグ)が遅すぎて不安です。本当に速くなりますか?

A. これが最も多い誤解ですが、「速くなるための練習(ポイント練習)」を100%の力でこなすために、ジョグは極限までリラックスする必要があります。 ダニエルズ理論では、Eペースを速く走りすぎることは「百害あって一利なし(疲労だけ溜まり、走力は上がらない)」とされています。AIの指示を信じて、勇気を持ってゆっくり走ってください。

Q3. もし急な用事で練習をサボってしまったら、どうすればいいですか?

A. 絶対に翌日に「倍走って取り戻そう」としないでください。 市販のスケジュール帳と違い、このプログラムは柔軟です。1日休んだ場合は、その週の調整メニュー(つなぎのジョグ)を削るなどして、全体のバランスを崩さない修正案を考えるのが正解です。(※モニター企画では、そうした相談も受け付けます)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

このメニューは、AIが適当に作ったものではありません。

「ジャック・ダニエルズの理論(VDOT)」という膨大なデータベースと、「Aさんの身体データ(年齢・怪我・要望)」という個別の事情

この2つを掛け合わせ、「怪我のリスクを最小限にしつつ、成長を最大化するルート」を論理的に導き出した結果です。

だからこそ、迷いなく練習できるし、結果が出るのです。

次回予告:「モニター募集」開始!

「すごいのはわかったけど、これ私の場合どうなるの?」
「私の年齢と目標タイムでも作れる?」

そんな声が聞こえてきそうです。もちろん、作れます。20代でも60代でも、サブ3目標でも初マラソンでも、AIはあなたに最適な答えを持っています。

そこで次回。このシステムを使って、あなたのための「PB更新専用メニュー」を作成する企画(モニター募集)をいよいよ開始します。

ただ、一人ひとり内容をチェックしてお届けするため、人数は限定(数名程度)にさせていただく予定です。

募集開始は次回の記事で行います。
興味のある方は、X(Twitter)をフォローしてお待ちください!

関連記事

この記事が役立ったらシェア

コメント

コメントする

目次